ファブ地球社会創造拠点
Center of Kansei-Oriented Digital Fabrication
ご挨拶
機構長
株式会社ロングフェロー
代表取締役社長
松原健二
研究リーダー
慶應義塾大学
環境情報学部 教授
村井純
インターネットの基礎をなす技術であるTCP/IPが生まれてから45年、ワールド・ワイド・ウェブができて25年が過ぎました。日本では、インターネットは世界の中でも先頭にたって、あらゆる産業や生活の前提となっています。10年、15年後には、今の日本のようなインターネットが前提となってあらゆる場面で活用されている状況が、全世界、地球レベル で 展 開されるでしょう。

インターネットは、人間一人一人がもっている力、つまり、感性、創造性、デザイン力、技術力などを含めて、「連結」することを可能にしました。個々人の力を連結は、新しいものを持続的に生み出し続け、新しい課題を解決する、楽しく、たくましい社会を実現するために欠かせない要素です。それと同時に、インターネットは、今、モノを創造する製造のプロセスをこれに加える見通しがたってきました。これはいわば、創造力と製造力のワールド・ワイド・ウェブのようなものです。人の感性や創造力とデジタルネットワークそれにデジタルテクノロジーの製造力が合成した全く新しい社会を「ファブ地球社会」と呼ぶことにしました。

ファブ地球社会では私達の生活は大きく変わります。あらかじめつくられたものが、運ばれ、保管され、必要に応じて提供される今までのサプライサイドの仕組みに加えて、必要な人が、必要なときに、必要な場所で、必要なものを提供できることができるようになると考えています。そのとき、人を思いやる心、愛する人に対する気持ち、個人の課題や目的や目的に応じて、思いやりと、工夫を個人のためでも、また、より目的にかなったものを創造できるようになるべきだと考えています。

このような社会の仕組みを実現するためには、もののデータと材料、個々人の感性や目的を理解して支援する仕組み、そして誰もが発想と思いを形にできるデジタルファブリケーターを安心して使うことができる環境と社会を創造する必要があります。環境とは機械へのアクセシビリティだけではなく、個人が必要なものを自由に作ることができる、作ったものを安心して売れる、リサイクルできて自然環境に対する影響が低く抑えられるなどが含まれています。

ファブ地球社会創造拠点では、このような社会を実現するために、人間や製造装置、社会制度、そしてその中間に位置する様々な技術課題、社会課題に取り組みます。
2021年までの達成目標
「標準化」+「個別化」=「適合化」
あらゆる要素を「標準化」し、コモディティ化が進むと、それらを組み合わせて個々に向けた最適なものを作るということが可能になります。その結果、現在よりもより高度に個人のニーズや状態に対してカスタマイズされたモノやサービスが提供されるようになります。
エンゲージメント中心社会
ヒトとモノとの関係がかわり、従来の買ってきたものが周りにあふれる状況から、一人ひとりにとって好ましいと思えるものを自ら作り、あるいは、選ぶようになります。身の回りのものだけではなく、社会サービスなども含め、従来の受動的で一方通行の関係から、より積極的で双方向、参加型の関係に変わってきます。
物流コスト50%減(モノ・人)
必要な物をその場で創りだして使うことになるので、大量生産された完成品が流通することが少なくなります。
新しい職種・職能の創生
人間とテクノロジーの創造的な関係が構築され、それを活用する新たな職能と職種が生まれます。
本研究拠点の特徴
研究リーダー補佐
慶應義塾大学
環境情報学部 教授
田中浩也
研究推進機構 研究統括
慶應義塾大学
政策・メディア研究科 特任准教授
渡辺智暁
理工系の研究者と、社会科学系の研究者が膝を突き合わせ、それぞれの視点から知恵を出し合いながら、ビジョン策定から、社会的インパクトを出すための戦略、本質に即した研究の評価方法までを絶えず議論しています。
さらに、「理工系」でも「社会科学系」でもない、実践的なデザイナやデザインリサーチャーを擁し、社会に働きかけるNPOやスタートアップ企業などとも連携することにより「技術」と「社会」の橋渡しに多面的に取り組んでいます。多様な研究者の間の有機的な化学反応から、美的な訴求力のあるアウトプットや制度的な成果物なども生み出します。(本COIは2014年度日本グッドデザイン賞受賞)
研究拠点は日本全国に分散していますが、ネットワーク会議システムを導入するなど様々な形で連携・結束を強め、「バーチャルアンダーワンルーフ」を実現しています。
ファブ地球社会のイメージ
国連のSDGs(Sustainable Development Goals)に示されているような地球全体の問題(※全15に集約された課題項目)が、実際には、地域ごとに多様な顕れかたをしている21世紀初頭の現在。この時代は、もう「ただひとつの普遍的で決定的な問題解決法」が世界のどこかにあるわけではない状態、つまり「正解のない時代」ではないでしょうか。

そこで、それぞれ地域に生きるローカルな人々が、それぞれの感性や創造性を最大限に発揮し、3Dプリンタをはじめとするデジタル製造技術を駆使しながら共創および連携し、コミュニティを中心とした新たな解決法を持続的に編み出し、改良し続けていく力が社会に必要になるはずです。

そして、各地域や各国をつなぐインターネットのオープンな力によって、ある地域で生み出された工夫やノウハウは別の地域へも共有され、さらなる改変と修正を経ながら新しい土地にも影響を与えていきます。ローカルな課題解決だけでなく、それがグローバルなコラボレーションとも連動して駆動する新しい世界が、「ファブ地球社会」なのです。