ファブ地球社会コンソーシアム
Consortium for the Global Society with Planetary Fabbing

本コンソーシアムは2022年3月末をもって終了しました。多数のご参加ありがとうございました。

ご挨拶
研究代表者:田中浩也(慶應義塾大学 環境情報学部教授) 村井純(慶應義塾大学 教授) 小川克彦(慶應義塾大学 環境情報学部教授)

「ファブ地球社会」は、2010年ごろにはまだ「未来のビジョン」に過ぎないものでしたが、今では日々進行形で現実化してきています。それは、人類にとって不可逆な「技術面」と「社会面」の2つの大きな変化(進化)から定義づけられるものといえるでしょう。

まず技術面としては、3Dプリンタをはじめとするデジタル・ファブリケーション技術が、グローバル・インターネットと結びつくことで、「モノ(物質)」と「データ(情報)」が相互変換可能となり、物流の一部がデータ転送に置き換わる、まったく新しい社会をつくりだそうとしています。作られた「モノ」に回路が埋め込まれインターネットにつながるとすれば、デジタル・ファブリケーションは "Internet of Things(IoT:モノのインターネット)"の生産基盤であるとも考えられます。こうした技術面における課題は、データの標準化、データを精巧につくりあげるための人材育成、データを正しく取り扱うための人材育成、データを安全に流通させるためのセキュリティ技術等です。

また、社会の変化として、生産者(サプライサイド)がつくったものを、消費者(デマンドサイド)が一方的に消費するという20世紀型産業だけでなく、「メーカー」と「ユーザー」が対等に共創し、価値を生み出す、21世紀型の新しいコラボレーションのかたちが見えつつあります。こうした社会面での課題は、複雑な価値の調整が必要となるステイクホルダー間をどのように調停し、価値を生み出し、そのような場を持続的に運営するかといった点があげられます。同時にファシリテーター的人材や、デジタルとリアルをつなぐプラットフォーム構築も課題となります。

本コンソーシアムは、技術面と社会面の2面が重なりあって到来しつつある「ファブ地球社会」において、共通の課題となる「新しいテーマ」をいち早く発見し、ワーキンググループ単位で議論する中で、新しい動向に向き合う際の前向きかつ創造的なアティチュードと、具体的なアクションを生み出すための母体となるものです。複数のワーキンググループの成果を集約しながら、異業種間のシナジーを生み出し、来るべき「ファブ地球社会」の経験を先取りすることを活動の目標とします。
コンソーシアム組織について

「ファブ地球社会コンソーシアム」は、文部科学省COI(Center of Innovation)に採択された「感性とデジタル製造が直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創生拠点」における基礎研究の成果をもとにしながら、産業化を加速するために設立されました。より応用に近い「現場」サイドで問題となっている社会的な論点を深めながら、新しいビジネスモデルを発案するなど、オープンな共創の場として「ファブ地球社会」の実現に向けて貢献します。
またコンソーシアムは大学ごと、地域ごとに分散して運営されているものもあります。慶應大学SFC研究所以外にも、 「やまがたメイカーズネットワーク」など、それぞれの大学が特色ある産学連携への取り組みを進めています。
さらに建築研究開発コンソーシアム(Consortium for Building Research and Development)に「建築分野における3Dプリンタ-活用展開の可能性に関する研究会」を設置し連携を図るとともに、慶應義塾大学SFC研究所の「ドローン社会共創コンソーシアム」など、他のコンソーシアムとの連携も進めています。

ファブ地球社会が地球規模で展開すると
国連のSDGs(Sustainable Development Goals)に示されているような地球全体の問題(※全15に集約された課題項目)が、実際には、地域ごとに多様な顕れかたをしている21世紀初頭の現在。この時代は、もう「ただひとつの普遍的で決定的な問題解決法」が世界のどこかにあるわけではない状態、つまり「正解のない時代」ではないでしょうか。

そこで、それぞれ地域に生きるローカルな人々が、それぞれの感性や創造性を最大限に発揮し、3Dプリンタをはじめとするデジタル製造技術を駆使しながら共創および連携し、コミュニティを中心とした新たな解決法を持続的に編み出し、改良し続けていく力が社会に必要になるはずです。

そして、各地域や各国をつなぐインターネットのオープンな力によって、ある地域で生み出された工夫やノウハウは別の地域へも共有され、さらなる改変と修正を経ながら新しい土地にも影響を与えていきます。ローカルな課題解決だけでなく、それがグローバルなコラボレーションとも連動して駆動する新しい世界が、「ファブ地球社会」なのです。